©nerunodaisuki

第19回 マンガ部門 新人賞

エソラゴト

ネルノダイスキ

作品概要

人や動物、無機物があたりまえのように会話する「童話」的世界を描いた全7本の短編集。家の中で壁に埋まった同居人と主人公の日常を綴(つづ)る「エソラゴト」、死後の世界に行けるという話を聞いた主人公がパソコンで検索して発見し、その場所を訪ねる「アザーサイド」、柴犬の尻をクリーニングする会社へ就職する「コーサ」、畑に突如として現われた白く巨大な生き物の退治を害獣駆除専門家にお願いする「へのへのもへ」ほか、いずれの短編でも緻密に描かれた背景上に簡略化された猫のようなキャラクターが主人公に据えられている。現実と似ているが、よく見ると異なる常識や風習、価値観をもつ風変わりな住人たちが暮らすパラレルワールドを描いた作品。

贈賞理由

「ネルノダイスキ」という人を食った名前の作者によるこの作品は、作品もペンネーム同様に読者を戸惑わせるおもしろさがある。簡略化されたキャラクターと細密な背景のコントラストは水木しげる風であるが、他方で米国のアンダーグラウンド・コミックスを彷彿とさせる、ひねりのきいたおもしろさもあって、読者を絵空事の迷宮へと誘い込む。飄々としたキャラクターの魅力に加えて、自由奔放な想像力を活かしたシュールな物語展開は、先の読めないスリルがあるだけでなく、作者の才能やのびしろを感じさせ、今後の活躍が望まれる。(古永 真一)