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監督・脚本・キャラクターデザイン・アニメーション:稲葉卓也|音楽:烏田晴奈|作画協力:オープロダクション|効果音:ONPa|プロデューサー:松本絵美|企画・製作:ROBOT”

第17回 アニメーション部門 優秀賞

ゴールデンタイム

短編アニメーション

稲葉 卓也

作品概要

舞台は、好景気に沸いた1980年代の日本。ある日、長年使われてきた60年代製の家具調テレビが廃品置き場に捨てられてしまう。テレビは捨てられたことを受け入れられず廃品置き場から脱出を試みるのだが……。テレビがたどった数奇な運命を人生に重ねてつづるストーリー。悲喜劇を通して、テーマである「生きることの肯定」が描き出される。脚本・演出・キャラクター造形に至るまでスタンダードな手法にこだわり、台詞を排除することで、アニメーションと、効果音、音楽の調和だけによる純粋な映像表現に挑戦。古典的な語り口とアナログなアニメーションによる新たなエンターテインメントを目指した作品である。

贈賞理由

NHK-BSのキャラクター「ななみちゃん」などで実力を蓄えてきた稲葉卓也が、確かなキャラクター造形と、見事なストーリーテリングの光る傑作を作り上げた。一言の台詞もなく、キャラクター一人ひとりの個性や感情を、その動きや仕草で生き生きと描く。テレビ受像機の見てきた昭和の風景はもちろん、星空の光、風、磁力といった自然現象に至るまで、彼らを包む情景描写も素晴らしい。更に擬人化キャラクターたちのプロフィールとして重要な要素となる効果音がいい。主人公の「木製感」やネコのぬいぐるみの「ぜんまい仕掛けによる笑い声」など、まさに完璧。一人でも多くの人に見てもらいたい作品だ。20分ほどの時間で、このようなしっかりとした構成を持つフィルムは“ 短編映画”の中でも商業的な需要の関係で制作されることが少なくなってきた。『つみきのいえ』に続き、自主制作の形で完成させたプロダクションにも大きな拍手を送りたい。(和田 敏克)