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第20回 マンガ部門 新人賞

ヤスミーン

畑 優以[日本]

作品概要

ライオンが支配する野生の王国を舞台に繰り広げられる「暴力動物アナーキズムマンガ」。王国に暮らす草食動物のトムソンガゼルはシマウマなどとは違い、ライオンに喰われることがない。なぜなら彼らは「不味い」から。美食に狂う王族のライオンたちに対し、抵抗するトムソンガゼルのブエナ、真っ向から対峙する伝説のチーター「白い悪魔」など、肉食、草食、雑食、さまざまな動物が血飛沫を上げ、王族に対し反乱を起こす。本作では、本来四足歩行の動物を二足歩行として描いているが、それぞれの種族の特徴を写実的に捉え、「どこかにこんな世界があるのかもしれない」と思わせることに成功している。

贈賞理由

「動物の王国」で起きる反乱、という牧歌的な香りもする設定を、きっちりと残酷に、高いテンションと熱量を持って描き切っている。「強いか弱いか」だけでなく「美味いか不味いか」で動物の価値が決まる、という倫理観を問うような設定を持ち込んだのも新しく、多くの審査委員から「何か」を感じる、という声が挙がった。動物の体つきや動き、表情などに、作者の絵を描くことへの喜びがあふれており、1コマたりとも手を抜かないという真摯な姿勢が感じられた。どこか懐かしい雰囲気も感じさせるこの個性を、このまま伸ばしていってほしい。(門倉 紫麻)