©︎ Sumito Oowara, Shogakukan / Eizouken Committee

第24回 アニメーション部門 大賞

映像研には⼿を出すな!

テレビアニメーション

湯浅 政明[日本]

作品概要

湖に面した人工島に建てられ、増改築を繰り返し複雑怪奇な建築となった芝浜高校に入学した⾼校1年⽣の浅草みどり。熱狂的なアニメ好きであり、スケッチブックにはいつもさまざまな設定のアイデアを描きためている。いつかアニメをつくりたいと思いながらもなかなか行動に移せない浅草は、プロデューサー気質を持つ友人の⾦森さやかを誘いアニメ文化研究会の見学に。そこで出会ったのが、カリスマ読者モデルでありながらもアニメーターを志望する水崎ツバメだった。3人は学校からの許可を取り付け、映像研究同好会(映像研)を設立し、「最強の世界」をつくるための奮闘を開始。舞台設定や背景美術を生み出す浅草、迫力ある人物の動きを描く水崎、2人の制作速度をコントロールしつつ予算や上映場所を確保するために奔走する金森が、各人の技能で制作に向かい合う。実際のアニメ制作の過程や、技術・演出論などをふんだんに盛り込み、キャラクターを通じてアニメづくりの葛藤や達成感も描写。大童澄瞳の原作マンガをベースに、世界のアニメ好きにも広く名の知られるアニメーターたちが、彼女たちの表現を手描きアニメーションならではの迫力で映像化し、アニメのおもしろさの真髄をアニメで表現した。

贈賞理由

制作者あるある。準備中のラフなイメージボードの方が実際の映像よりキマっていて「この絵のまま動かせば良かったのに」とガックリすること。丁寧につくり上げた映像も確かに良い。しかし、思いのままに鉛筆を走らせ、淡彩で色を乗せた絵が動くのを想像するのも楽しい。商業アニメがセルを使用していた当時は不可能に近かったが、デジタル化した今、本作品は実現した。その結果、何を生んだか? キャラクターや美術のルックも相まって作品内の現実と空想がないまぜになり、登場人物たちがイメージを共有していくさまを視聴者は台詞ではなく感覚で理解するという希有な映像体験を味わっていたのではないだろうか。しかもそれは毎週続く。キャラへの愛着、彼女たちの夢想への共感も増していく。全話数で初めて1本の作品であるというテレビアニメの不利を、本作品はむしろプラスに転じている。タイトルとは裏腹に、映像づくりへの愛おしさといざないにあふれているのが素晴らしい。(佐藤 竜雄)