© 坂本 眞一/原案・新田次郎著『孤高の人』/集英社

第14回 マンガ部門 優秀賞

孤高の人

ストーリーマンガ

坂本 眞一/原案・新田 次郎著『孤高の人』

作品概要

山岳小説の金字塔『孤高の人』が、現代を舞台によみがえる。孤独な青年・森文太郎はクライミングと出会い、極限の登山に「生きる」感覚を求めて、人類未踏の氷壁・K2東壁を目指す。だが文太郎には、日常でも山の中でもさまざまな困難が降りかかってくる。困難に遭いながらも文太郎は、ただ己の目標に向かって、一歩一歩進んで行く。

贈賞理由

危険と美、極限の自然描写が生きる意味を問いかける
山の持つ危険性について、これほど見事に表現したマンガが過去にあっただろうか? 山の怖さとクライミングのスリルが、人間の心理ドラマと雄大な景色を通して、存分に描き出されている。人とのつながりを拒絶し、生きる目的を見出せない孤独な主人公は、行きがかりから危険なクライミングに挑戦する。死に瀕した状況の中で「生きている」と実感したことにより、クライマーとして目覚め、山に挑み、山に惚れていくのだ。「リアル」の追求に妥協を許さぬ作者の姿勢は、緻密な大自然の背景描写にもおよび、読者を主人公とともに未知の山に連れ出してくれる。
一歩間違えば命を落とす危険なクライミング。美しい大自然の中での、激しい肉体の酷使。山に魅せられ、ソロ・クライマーとして生きることに人生の喜びを見出した青年の心の軌跡を描いた、山岳マンガの傑作である。