第19回 功労賞
小田部 羊一
アニメーター/作画監督/キャラクター・デザイナー
プロフィール
1936年台湾台北市生まれ。東京藝術大学美術学部日本画科卒業後、1959年に東映動画株式会社へ入社。長編『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)、『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968)、『長靴をはいた猫』(1969)などでアニメーション原画を担当。『空飛ぶゆうれい船』(1969)では初の作画監督を務める。1971年高畑勲、宮崎駿とともに東映動画を辞し他社で『パンダコパンダ』(1972)や『赤胴鈴之助』(1972)の作画監督として活躍した後、『アルプスの少女ハイジ』(1974)、『母をたずねて三千里』(1976)ではキャラクターデザインとしても明記される重責を果たした。1979年には再び東映動画で長編『龍の子太郎』のキャラクターデザイン・作画監督を担当した。宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(1984)、高畑勲作品『火垂るの墓』(1988)では短いながら重要なシーンの原画を提供するなど、つねにアニメーション史に残る名作にその名を刻んできた。1985年には開発アドバイザーとして任天堂株式会社に入社。『スーパーマリオブラザーズ』『ポケットモンスター』シリーズなどのデザインを監修する。2003年には連句アニメーション『冬の日』の制作にも参加。現在、日本アニメーション文化財団理事ほか、多数の役職を務めながら講演や後身の指導、展覧会などで活躍している。著書に『小田部羊一アニメーション画集』(アニドウ・フィルム、2008)。
贈賞理由
贈賞が遅すぎたと誰もが思うひとりであろう。日本のアニメーション界のレジェンドのひとりである。旧東映動画時代、原動画や作画監督として『空飛ぶゆうれい船』(1969)ほか数多の作品に関わり、その表現の巧みさや斬新さは現在でもまったく色あせない。世界中で親しまれている『アルプスの少女ハイジ』の「ハイジ」などテレビや劇場作品におけるキャラクターデザインの数々は、氏(マエストロ)によってまさに魂(アニマ)が込められ永遠の生命(いのち)を保ち続けている。現場や教育機関を通じて後進の育成にも努め、ゲームの世界にも新風を吹き込んだ。広くわが国のアニメーション文化への貢献と功績は多大である。(小出 正志)