第17回 功労賞

松本 俊夫

映画監督/映像作家/映画理論家

プロフィール

1932年、愛知県生まれ。55年、東京大学卒業。日本の前衛的記録映画、実験映画、マルチ映像、ビデオアートの草分け的存在として活躍。記録映画『母たち』でベネチア国際記録映画祭サンマルコ金獅子賞(グランプリ)受賞(67年)。『石の詩』(63年)から『記憶痕跡』(87年)に至る実験的短編映画、『新陳代謝』(71年)から『偽装』(92年)に至るビデオアート、『薔薇の葬列』(69年)、『修羅』(71年)から『ドグラ・マグラ』(88年)に至る実験的劇映画などを国内外で発表。複合メディアの領域において、「日米クロストーク・インターメディア」(69年)に参加、その後、大阪万博せんい館(70年)の総合ディレクターを務めた。映画理論家としても、『映像の発見』(63年)、『表現の世界』(67年)、『映画の変革』(72年)、『幻視の美学』(76年)、『映像の探求』(91年)、『逸脱の映像』(2013年)などを著す。
制作・執筆と同時に、映像教育の分野にも尽力。東京造形大学デザイン科助教授(68-71年)、九州芸術工科大学芸術工学部画像設計学科教授(80-85年)、京都芸術短期大学映像専攻課程主任教授(85-91年)、京都造形大学教授(教務部長・91-94年、芸術学部長・95-96年、副学長・95-98年)、日本映像学会会長(96-02年5月)、日本大学芸術学部教授(99-02年)、日本大学芸術学部大学院客員教授(02-12年3月)を歴任した。

贈賞理由

アヴァンギャルドとドキュメンタリーの蜜月について、1950年代後半から言及を始め、実験映画、ビデオアート、メディアアートの開墾を半世紀という長いスパンで実践し続ける前衛先駆者こそ、松本俊夫氏だ。彼は「映像」という言葉を日本に定着させ、記号論や独自の視覚哲学をそこに注入することによって、映像概念そのものをパラダイムシフトさせると同時に、「メディア芸術」たらしめた“ 真の功労者”である。映像理論、映像教育の分野開拓にも尽力し、功績を残した。(宇川 直宏)