第23回 エンターテインメント部門 優秀賞
大喜利AI&千原エンジニア
アプリケーション、映像作品
『大喜利AI&千原エンジニア』制作チーム(代表:竹之内 大輔) [日本]
作品概要
大喜利に特化した対話型AIと、その「育成機能」を用いて行われた番組企画。大喜利AIは、お題となる文章や画像に対してボケた回答を生成する。番組では各タレントに弟子AIが割り振られ、AIから毎日出題される育成お題に回答することで、育成者たちのユーモアを学習させて弟子AIをパーソナライズさせていく。育成は友人やSNSで呼びかけたファンと一緒に約3カ月間かけて行われ、最終的にスタジオで弟子AIたちによる大喜利バトルを開催した。なかでも、大喜利好きなファンを多く巻き込むことに成功した千原ジュニアの弟子AI「千原エンジニア」がとりわけ強さを発揮した。大喜利AIはテンプレートを用いない、その都度発話を生成するモデルでできている。個々の人間に内在している「ユーモア」を外部化することで、AI同士での芸風の交換や合体を可能にした。大喜利AIはLINE上で誰でも遊べるアカウントとして約18.3万人に友だち登録されている(2020年1月時点)。
贈賞理由
人類3度目のAIブームがいったん落ち着き、期待先行のニーズが沈静化しているタイミング。実用と幻想がくっきり分かれて、意見も出揃ったフェーズでこの大喜利AIの登場。受賞者のチーム代表・竹之内大輔は、大喜利に特化したAI「大喜利β」というサービスを長く運用してきた。日本語特有の、単なる形態素解析では分類しきれないニュアンスの豊富さ。当時から「ぼんやりとしたイメージをバッファとして持っておく」ことに挑戦していたが、ここにきてその蓄積が見事に開花している。当時からSNS越しに寄せられたお題に答える機能があったものの、笑いにつながる打率はそれほど高くなかった。人間側のフォローが大いに必要で、それは多くのジャンルの人工知能(AI)が現場で期待に応えられていないイメージと重なった。大喜利AIは、それらの悲しい実例を見事に克服。好きなお笑い番組を観て楽しむように、技術のことを一切気にせず、ゲラゲラ笑った。何よりの成果であるし、優秀賞に値する。(川田 十夢)