©︎ 2019 Azumi Maekawa.

第23回 エンターテインメント部門 新人賞

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プロダクト

前川 和純/松原 晟都 [日本]

作品概要

トラッキングカメラとロボットハンドにより、「目標物に命中した体験」を計算機的に生成する作品。物体と目標物との位置関係を把握し、物体の飛行軌道を計算し続けるシステムにより、人間の腕の動作に応じて、目標物に対して望ましい軌道が得られた瞬間にのみロボットハンドが物体をリリースし、物体が目標物に向かって投げ出される。腕を振るのは人間であるが、リリースするタイミングの判断と実行は機械によって行われる。そのため体験者は、自分と機械どちらが投擲を行ったのか不思議な感覚に陥る。人と機械の動作を融合させてひとつの行為を合成することにより、運動行為における両者の境界とその相互作用を探ると同時に、人間の心理感覚にも踏み込む作品。

贈賞理由

ヒトと機械をひとつの制御系とみなして統一的に把捉しようと試みたサイバネティクスという情報科学の古典が目指した理念の、目の覚めるような具現化。どこまでが人間の随意でどこからが機械に託されるのかが曖昧化し、自らの身体感覚が拡張されていく感覚を、投擲運動の楽しさのなかで追求できる点が素晴らしい。おそらくは成功体験だけでなく、機械の裏をかいて失敗させるゲーム的な挑戦意識をもかき立ててくれるのだろう。研究開発とエンターテインメントのあわいを攻めたシステムは、ぜひとも体験してみたいという気にさせてくれる。(中川 大地)