©︎ Tomoki Misato JGH, Shin-ei Animation / MOLCARS

第25回 アニメーション部門 ソーシャル・インパクト賞

PUI PUI モルカー

テレビアニメーション

見里 朝希[日本]

作品概要

ストップモーションによって撮影された、2分40秒のオリジナルショートアニメによるテレビシリーズ作品。舞台は、羊毛フェルトによってつくられたモルモットが車になったキャラクター「モルカー」たちが、人間とともに住んでいる世界。ストップモーション・アニメでありながらも、縦横無尽にカメラが動き、カーチェイスや墜落、爆発を交えた激しいアクションシーンが臨場感豊かに描かれている。モルカーの声優は実際のモルモットが担当し、さらに実写の人間がピクシレーションで出演。人間がモルモットに乗るというモルカーならではの独特なシチュエーションで物語が展開するが、ナレーションや字幕といった言葉での説明を極力排しており、視聴者の想像力に委ねた、言語を超えて楽しめる映像となっている。またモルカーたちの巻き起こす騒動は、ただのかわいさのみならず、社会風刺を交えたメッセージ性も意識されている。

贈賞理由

モルモットと車を組み合わせた愛らしいキャラクターデザイン、それを形づくる柔らかなフェルト、いかにも人形といったつくりの小さな人間たちなど、まずは、ビジュアルの魅力に目がいく。コマ撮りを中心にさまざまな映像技術を組み合わせ、派手なアクションからリミテッドでユーモラスな動きまで、幅広い動きの表現を混在させており、それが作品に厚みを与えている。実写の人間や動物を人形の世界のなかに登場させる(シーンによって人間の表現方法を変える)など、自由で挑戦的な演出も高く評価された。セリフがないのも本作の強みとなっており、言葉を排除することで、さまざまな国の老若男女が楽しめる作品となっている。作者の商業アニメーション初監督作品となる子ども向けの短いテレビ番組が、口コミとネット配信により多くの層に届き支持されたことは、社会と映像業界に大きなインパクトを与えた。(大山 慶)