© YAMAMOTO Yoshihiro

第15回 アート部門 大賞

Que voz feio(醜い声)

映像作品

山本 良浩

作品概要

時間、話者、字幕など様々なレベルでの「差」を体験する映像作品。別々の場所にいる双子の女性が柔らかな物腰で幼少期に起きた、とある事件を語り出す。鑑賞者は2画面の映像、音声、字幕を同時に受け取ることによって、彼女たちが同じ事件のことを語りながらも内容に微妙な差異があることに次第に気付いていく。片方の映像から得られる情報に注視すると他方からの情報が疎かになり、双子の語る記憶と同様に、細部が混ざり合い、曖昧になっていく。

贈賞理由

ヒトの記憶と認識の「差」に迫る2つの映像
2つの画面を投影したシンプルな展示は、作品の孕む「相似」と「差異」、双方の要素を浮かび上がらせる。映像にクローズアップされるのは、顔立ちのそっくりな双子の女性。2人は「醜い声」になった理由だと思い当たる、幼少期の1つの思い出をそれぞれに語り出すのだが、しかし話は微妙に食い違っていく。1つの事件は2つの記憶を介することで次第にズレが明らかになる。柔らかなトーンのポルトガル語による彼女たちの語りは、翻訳され、字幕となって映像に伴うものの、片方を追えばもう一方の字幕を追えず、同時に両方の理解は叶わない。記憶とは現実を映すものではなく、時間の経過の中で曖昧さを増していくものだ。双子の告白は、さらに音声と文字、母国語と翻訳、幾重にも違いを内在する。私たちは過去の認識を共有できるのか、その可能性と不可能性さえも静かにあぶり出す、知的で繊細な視点が際立つ。