© 石田祐康 / 京都精華大学

第15回 アニメーション部門 新人賞

rain town

短編アニメーション

石田 祐康

作品概要

いつからか雨が止まなくなり、住民が郊外や高台へと移り住んでいった街・rain town。打ち捨てられ、誰もいない廃墟と化した「雨の街」の奥深くへと迷い込む少女。そこで出会う、かつての街の記憶を持つ一人ぼっちのロボット。どこか寂しさとノスタルジアを感じるほの暗くも美しい世界の情景を、静謐な音楽と降りしきる雨の音のみで優しく描いた作品。

贈賞理由

郷愁を呼び覚ます、降り続く雨音と情景
雨の光景がひたすら印象的である。距離をおいて捉え続ける被写体たちは音も含め存在感を放たず、風景の一部のようだ。作者はこの作品を通じて何を言いたかったのだろうか。雨とは何を意味するのだろう? メタファーへの憶測をよそにこの映像世界の中ではただ淡々と時間が流れ、鑑賞者は次第に身を委ねる心地良さに包まれてゆく。そんな「世界」をアニメーション表現で創造しようとしたのかもしれない。
昨年の優秀賞『フミコの告白』石田祐康による新人賞受賞である。異例との声も上がったが「新人」の規定をめぐる今年度アニメーション部門審査委員による見解で「年齢は無関係、審査委員総意による評価すべき新しい才能」として慎重に討議された末の堂々の結果だ。
演出技法や制作フロー、テーマへのアプローチを解析・証明しつつ着実に作品を創り続けるこの若いアニメーションクリエイターの成長が楽しみである。