© SHIMURABROS.

第13回 アート部門 優秀賞

SEKILALA

映像

志村 諭佳 / 志村 健太郎(SHIMURABROS.) [日本]

作品概要

ある家族の物語。舞台は、あたかもひと続きの世界のようである。だがそれは、高度な仮想現実技術で結びついた断絶の世界。生活に疎外感を感じながらも、生の感覚を抑圧してきた父親は、組織工学による生きた家具「バイオファニチャー」と出会う。3つのスクリーンに展開される開かれた物語は、新たな物語を紡ぎつづける。

贈賞理由

3面プロジェクションによるインスタレーション形式をとるこの作品では、仮想現実空間を介した家族の(ディス)コミュニケーションを、ネズミを組み込んだ有機的な家具(バイオファニチャー)をめぐって描く物語が、断片的なシークエンスの自由な組み合せとして、空間・時間的に毎回異なるかたちであらわれる。どこまでが誰の現実、記憶、妄想なのか。時制、人称、ストーリーなど、観客は異なる仮想空間を自由に行き来する存在として、それぞれの解釈を紡いでいく。独特の空気感で秀逸に仕上げられた映像は、一見オーソドックスだがそれも意図的なものだろう。コンテンツとしての映像のクオリティと、メタフレームとしてのシステムや空間の構造のコントラストが鮮やかで、その意味できわめて周到に実現された作品といえる。映像の文法や映像メディアのメカニズムに対する作者の探究心と批評的なまなざしが、一貫して感じられることも受賞の理由となった。