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第23回 エンターテインメント部門 大賞

Shadows as Athletes

映像作品

佐藤 雅彦/佐藤 匡/石川 将也/貝塚 智子 [日本]

作品概要

日本オリンピックミュージアムに設置された、ウェルカムビジョンのためにつくられた映像作品のひとつ。映像は、フェンシングや新体操など、約10種の競技を行うアスリートの影を中心に撮影され、俯瞰または天地が反転した状態で、静かなピアノの音楽とともに展開される。アスリートの実体は不自然なアングルで撮影されている上に、しばしば画面から見切れてしまっているため、鑑賞者は必然的に影に注目して映像を見ることになる。影からは、名前や容貌、国籍や年齢といったパーソナルな情報は得られず、表情や細かい筋肉の動きを見てとることはできない。時には影のフォルム自体が歪んでしまい、アスリートの動きや姿勢がまったくわからない瞬間も存在する。映像には限定的な情報しか映し出されないが、鑑賞者が、その欠落した情報を補完して理解しようとすることで、実体を直接見るよりも選手の必死さやひたむきさが伝わってくる作品となっている。鑑賞者が自分自身の想像力を働かせながら鑑賞する仕掛けに加え、ナレーションのないノンバーバルな映像にすることで、この映像のイメージを普遍的なものとした。

協力:日本オリンピックミュージアム

贈賞理由

メディアという概念が目まぐるしく変化する現在、パソコンやアプリなどは誰もが使えるものになり、高度な編集や制作までできるようになった。私たちはそれを使うのか? それに使われるのか? そのモーメントの境界線上にいるような気がする。今の時代、特にエンターテインメントという分野は新しい「視点」や「可能性」を提示し称賛すべきなのかもしれない。『Shadows as Athletes』にはそんな現代のメディアに必要な視点への気づきが多く含まれていた。いつの時代にも変わらない美しさやメディアを通すことで人に投げかける疑問や想像など、メディア表現が忘れていた純粋さを気づかせてくれたように思う。テクノロジーは魔法ではない。テクノロジーは我々が使うべき道具であり、その道具を使ってどのような想像を具現化していくのか? エンターテインメントという消費者に近い存在でどのように変化と同時に進化していくべきなのか? この作品をひとつの原点としもう一度考えるべきだと思う。(齋藤 精一)