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第25回 アニメーション部門 優秀賞

Sonny Boy

テレビアニメーション

夏目 真悟[日本]

作品概要

夏目真悟が脚本・監督を務めたオリジナルテレビアニメーション。中学3年生の長良たちは突然、クラスメイトとともに学校ごと異次元の島に漂流してしまう。そして漂流と同時に、彼らは「能力」を手に入れる。超常的な力を使い暴れる者もいれば、逆に統率しようとする者も出てくるなかで、不信や嫉妬、対立などの人間関係の機微が描かれる。島を起点としながらも後半はさまざまな時空間を漂流していく先の見えないストーリー展開は、視聴者の興味を引き、手描きにこだわった背景美術は、撮影処理によってフォトリアリスティックな効果が与えられることも多い近年のアニメとは一線を画すビジュアルを成立させている。劇伴音楽を使用せず、各話の要所で劇中にテーマ曲を挿入する音楽演出は、作品の印象をより鮮烈なものにした。キャラクターデザインを手掛けたのはマンガ家・イラストレーターの江口寿史。制作はマッドハウスが担当。

贈賞理由

テレビアニメという制約の多いメディアのなかにあって、非常に個性的な画面づくり、語り口に挑戦し、類例のない作品世界をつくり上げた。中学生たちが学校ごと、異世界へと「漂流」してしまうという導入はいかにもジュブナイルSF的だが、本作は冒険ものではない。視聴者は、毎話登場する奇妙な設定や世界観とそれによって発生する事件に驚かされることになるが、これらの個性的なエピソードは、最終的に「世界のルール」と「自分の力で世界を選択する」という2つを描くためのものだったということがわかる。そして、この2つを描くうえでは「世界とキャラクターの関係」を視覚化することが重要で、筆のタッチを生かしつつ存在感ある美術は、シンプルなキャラクターデザインともよくマッチし、作品の狙いを伝えるうえで非常に大きな役割を果たしていた。表現の挑戦と主題が見事に絡み合った一作といえる。(藤津 亮太)