©︎ 2018 Jonathan Fletcher Moore.

第22回 アート部門 新人賞

SPARE (not mine)

インタラクティブアート

Jonathan Fletcher MOORE [米国]

作品概要

ロサンゼルスの道路は使い古されたタイヤで散らかっている。本作は、その破棄されたタイヤから作られた自走する立体作品。ロサンゼルスは全米屈指の車社会として知られるが、フォード・モデルTが開発された1908年から100年以上が経とうとする現在、自動運転車の登場で、交通、労働環境に大きな転換期が訪れようとしている。本作は自動運転車と同様に、電子センサーやAIによって自分自身や周囲を認識できる。そして、マイクロコンピュータ、慣性計測ユニットなどを使って位置や回転、加速度、進路にある障害物を認識し、行動を決定する。動き続けるタイヤは壁にぶつかり、その跡を残していく。この作品は、自動車業界に起こっているAIの利用や自動化の勃興と、人間が受ける影響について探求している。

贈賞理由

1本のタイヤが壁に繰り返しぶつかり、その跡を残す。この作品は、自律走行車や自動運転車の出現に対する批評であり、同時に遊び心のある観察である。車という概念は、「駆動することで前進する」という絶対的な意志として1本のタイヤに集約される。しかしその結果として残ったのは、目標も方向性も持たないかのように壁にぶつかり続けるタイヤである。自動運転車と同様に人工知能によって動くこのタイヤは、アニマと自律性を見る者に感じさせ、壁に残された痕跡はAIが出現したことの痕跡となり化石となる。それは「機械の詩」を表すのか、「機械の愚かさ」を表すのか。あるいは私たち人間は、AIが可能性を最大限発揮することを制限しているのだろうか。(ゲオアグ・トレメル)