©︎ 2020 FURUKAWAHARA Momoka

第24回 アニメーション部門 新人賞

かたのあと

短編アニメーション

ふるかわはら ももか[日本]

作品概要

夢のなかに出てきた友達のえみちゃんは、触ると小さくて、やわらかくて、温かかった。そんな感触から目覚めて学校へ行くと、体育はプールの授業。水着を忘れた主人公は、その日は授業を見学するというえみちゃんから水着を貸してもらうが、自身の身体に対してえみちゃんの水着は小さく、窮屈だった。全編を通して鉛筆で描かれ、かすれた質感やところどころに入る赤やピンクが、ラフでかわいらしい印象を与える。一方で、体に触れる、水のなかで泳ぐなどの体にまつわる描写は生々しく、主人公により一連の出来事が語られるというモノローグ形式も相まって、作品にはどこか緊張感が漂う。「性」を意識する年頃のビビッドな感情を描いた、感覚に訴えかける一作。

贈賞理由

これは作者にとってきわめて個⼈的で特別な記憶を形にした「個⼈映画」だ。⾒る⼈によっては、動画コンテのようだと思うかもしれない。そのくらいこの作品の描画は⾊数や線の数が少ない。しかし、今回はこのスタイルが結果的に、作者の個⼈的な物語に説得⼒やリアリティを持たせ、性的になりすぎることを回避させている。アニメーション作品の完成度は絵の密度や形の正確性や⾊数の多さに⽐例するわけではないという適例である。拙い部分もあるが、このテーマを描ききったのは⾒事。これからも信頼できる完成度の⾼い個⼈映画をつくって欲しい。(大山 慶)