第25回 アート部門 優秀賞
四角が行く
メディアインスタレーション
石川 将也/杉原 寛/中路 景暁/キャンベル・アルジェンジオ/武井 祥平[日本/米国]
作品概要
物理的な3つの関門に合わせ動く3つの四角と、CGアニメーション上でしか見えない関門に合わせ動くひとつの四角という2つの機構が組み合わされたインスタレーション。四角はせまりくる関門に空いた穴を、移動したり、向きを変えたりしながら通り抜けていく。こうした概念的なプレゼンテーションを行うことによって、鑑賞者に四角の動きが従っているルールの存在を気づかせ、それに従うことの健気さや怖さ、そしてルールを突破する方法が必ずしもひとつではないことを、言葉を使わずに伝えている。四角の動きからは、何らかの法則性がほのめかされており、それは社会の様相ともどこか共通しているという気づきをもたらすだろう。アニメーション上でしか視認できない関門は、法律をはじめとした見えないルールの存在を示唆する。本来はCGやコマ撮りでしかできない運動が、さまざまな技術を駆使して具体化されている。
贈賞理由
最近メディアアートの多くが、プロジェクターを多数使った「大規模プロジェクターアート」になっていると感じることがある。それ自体は技術の進歩によるものなので責められないが、他方で「メディアアートは本来もっと可能性を秘めたものなのでは?」とも思う。本作は作品サイズとしては小ぶりだし、応募資料の写真で一見しただけでは控えめで大げさなところはない。しかし動いている実物では、まるで魔法のような出来事が顕出する。障害をあの手この手でクリアしていく小さなオブジェたちが、生物のようにも思えて初出の展覧会「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT、2021)のテーマにも深く踏み込んでおり、またこの分野に長く携わる自分でも、仕組みや機構が想像できない、というところにも魅了されてしまった。本作には優秀なクリエイターが多数関わっており、他者の仕事への尊敬と技術が組み合わさってこの奇跡を実現しているのだと思うが、各人の将来の仕事にも、また大きな期待を感じている。(八谷 和彦)