©Marcel·lí Antúnez Roca

第19回 アート部門 優秀賞

Ultraorbism

メディアパフォーマンス

Marcel·lí ANTÚNEZ ROCA

作品概要

スペインのバルセロナと英国のファルマスの2つの都市をネットワークでつなぎ、インタラクティブにパフォーマンスを行なった作品である。どちらの都市の会場でもドローイングのための床面が用意され、中央に大きなメインのスクリーン、脇に小スクリーンを設置している。メインのスクリーンでは、もう一方の都市でのパフォーマンスを反映しながら物語が展開する。小スクリーンは、パフォーマンスの詳細を映しだす。パフォーマンスはサモサタ(現・トルコ)のルキアノス(紀元2世紀のシリア人作家)が書いた最古のSFのひとつといわれる『本当の話』(全2巻)のうちの第1巻に基づいており、神話や当時の文学を参照しつつも、すべてがつくりこまれた荒唐無稽な旅物語である。この物語は、階層の異なるイメージによって展開していく。一部はリアルタイムのパフォーマンス映像であり、そのほかはあらかじめ蓄積されたイメージである。それらが重ね合わされた映像によって物語が紡ぎだされ、音楽や照明もインタラクティブに、物語のイメージに即応している。

贈賞理由

『Ultraorbism』は、サモサタのルキアノスの『本当の話』を、作者の独創的な世界観によって展開させたメディアパフォーマンス作品。作者は、自身の身体と機械を融合させるパフォーマンスやユニークなアニメーションによる作品で国際的に知られているが、本作ではi2CAT財団(次世代インターネット等の研究財団)やダンサーが参加し、より劇場的な作品となっている。スペインのバルセロナと英国のファルマスの2つの会場で別々のパフォーマンスを同時進行で行ない、音楽や照明もネットワーク上の映像とインタラクティブに進行する。彼の舞台上でのドローイング行為や、何枚にも重ねられた巨大な絵画を物語とともにめくり続ける際の、そのアクチュアルで原初的なパフォーマンスは見応えがあり、それが異なる場所にいるダンサーや観客と高度な視覚環境のもとで融合していくさまは、祝祭的であり新たな実験として魅力的である。(石田 尚志)