募集期間
2021.7.1(木) - 9.3(金)
主催
文化庁メディア芸術祭実行委員会
会長
都倉 俊一(文化庁長官)
運営委員
草原 真知子(メディアアート・メディア考古学研究者/早稲田大学名誉教授/博士(工学))
建畠 晢(多摩美術大学長)
古川 タク(アニメーション作家) 審査委員:
開催日程
2022.9.16(金) - 26(月)
贈呈式
2020.9.15(火)
会場
日本科学未来館
サテライト会場
CINEMA Chupki TABATA, 池袋HUMAXシネマズ, クロス新宿ビジョン, 不均質な自然と人の美術館
入場料
無料
協力
CINEMA Chupki TABATA
LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社
インテル株式会社
オーストリア文化フォーラム東京
株式会社オムニバス・ジャパン
株式会社クロススペース
株式会社トーハン
株式会社ヒューマックスシネマ
株式会社フレーベル館
株式会社ユニカ
日本科学未来館
豊後高田市
豊後高田市観光まちづくり株式会社
審査委員
岩崎 秀雄
クリストフ・シャルル
竹下 暁子
田坂 博子
八谷 和彦
えぐちりか
小西 利行
さやわか
時田 貴司
長谷川 愛
大山 慶
権藤 俊司
須川 亜紀子
藤津 亮太
水﨑 淳平
おざわ ゆき
倉田 よしみ
斎藤 環
島本 和彦
杉本 バウエンス・ジェシカ
川村 真司
水口 哲也
米澤 香子
選考委員
岡 瑞起
岡田 志麻
後藤 映則
高尾 俊介
萩原 俊矢
平川 紀道
平原 真
明貫 紘子
指吸 保子
稲葉 まり
今井 晋
葛西 祝
土屋 綾子
増田 展大
渡邉 大輔
青柳 美帆子
植草 航
小野 ハナ
高瀬 康司
タニグチリウイチ
萩原 由加里
伊藤 遊
猪俣 紀子
菅野 博之
久保 直子
玉川 博章
豊田 夢太郎
長池 一美
日高 利泰
横井 周子
草原 真知子
メディアアート・メディア考古学研究者/早稲田大学名誉教授/博士(工学)
制作活動や展示企画が困難な状況が世界各地で続くなか、国内外から多くの優れた作品が寄せられた。創造性にあふれた多様で自由な表現を生み出すアーティストたち、そして彼らを支える人たちの奮闘に心からの敬意を表したい。意表を突いた作品やユーモアのセンス、完成度の高いストーリーなどが私たちを大いに楽しませると同時に、国際的な緊張の高まりや環境破壊、差別やバイアスなどの社会問題に対するコメンタリーや問題提起も多い。アート部門大賞の『太陽と月の部屋』やソーシャル・インパクト賞の『Bio Sculpture』はメディア技術を介して人と自然の調和を提示し、アート部門の『mEat me』、エンターテインメント部門の『Dislocation』、アニメーション部門の『Yallah!』、マンガ部門の『ダーウィン事変』などは現代社会のシリアスな問題を扱ってアートが私たちの世界観に働きかける力を感じさせた。
特に今回の特徴として、いま社会で起こりつつある大きな変化、すなわちパンデミックとVRの普及とメタバースの登場でコミュニケーションの場の主力がバーチャル空間に移り、リアルとバーチャルの境界やアイデンティティの感覚が揺らいでいるという状況を鋭く捉えた作品が目立った。アート部門の『あつまるな!やまひょうと森』、『Uber Existence』、エンターテインメント部門の『viewers:1』などの着眼点の鋭さは、疫病の陰鬱な影響をオリジナリティあふれた作品にまで昇華することができるアーティストの力とアートが持つ限りない可能性を示しているだろう。
建畠 晢
多摩美術大学長
文化庁メディア芸術祭は今回で25回目を迎えた。この四半世紀の歩みはメディア芸術という新たな領域の成熟に大きく寄与してきたといえよう。今回も引き続きコロナ禍の下での審査であったが、総応募件数も3,537作品が寄せられ、ほぼ例年並みの応募数であった。公募や審査の一部をオンラインで行ってきた文化庁メディア芸術祭は、比較的スムーズにこうした事態に対処し、時代の動向に機敏かつフレキシブルに対応し続けてきた。
また、各部門の定義自体が常に流動的なメディア芸術のあり方は、四半世紀という時のなかで、社会状況や技術の変遷に応じつつ、それぞれの特性を鮮明に浮かび上がらせてきたともいえよう。今回も、実社会に対する影響の大きさを評価するソーシャル・インパクト賞、18歳未満を対象とするU-18賞、日本科学未来館の設備や施設の特性を活かした企画を公募するフェスティバル・プラットフォーム賞で注目に値する受賞作品が選出された。
さて、アート部門の大賞は『太陽と月の部屋』である。大分県豊後高田市にある「不均質な自然と人の美術館」に設置されたサイトスペシフィックな作品で、コロナ禍にあって自然と触れ合い身体性を拡張するというテーマのもとで、太陽の光と戯れることができるというコンセプトは実に興味深い。エンターテインメント部門の大賞はテレビ番組の『浦沢直樹の漫勉neo ~安彦良和~』で、さまざまな視点からマンガ家の手業を存分に見せてくれるまさにエンターテインメント作である。先鋭な実験的作品から多くの方々に親しまれるメジャーなコンテンツまでの間口の広さが、メディア芸術祭ならではの魅力をなしているに違いない。
古川 タク
アニメーション作家
大変なお仕事を務めていただいた審査委員の方々からの口から、まず聞こえてきた一言が「コロナ禍にあって」「このコロナ禍の状況のなかで」「意外にコロナ禍の影響を受けていない」などなど、今年も枕詞のように「コロナ」が飛び出した。作品のなかにも、特にアート部門やエンターテインメント部門に、未だ終わりが見えないこの状況に果敢に挑むもの、シニカルに楽しもうとするもの、スマホやVRを駆使したライブ空間と時間を生み出そうと試みるもの、実に興味深い作品が集まった。アニメーション部門やマンガ部門はどちらかというと、コロナ禍以前から、部屋に籠ってのなかなか孤独で物理的な作業時間が必要とされるからか、あまり新型コロナウイルスの影響で生活が一変したという話を聞かない。もちろん、映画祭など作家や監督たちが一堂に会して……という機会こそ、ハイブリッド開催など工夫は凝らされているものの、世界中でもう3年間も満足な形では開かれていない。
一方でその時間を制作に振り向けて、山村浩二氏や去年の岩井澤健治氏のように、ほとんど一人または少人数で劇場用長編アニメーション作品を生み出す監督や作家が出てきたのは、素晴らしい。そしてこれは世界的な傾向でもある。さらに近年、文化庁メディア芸術祭本体だけでなく、各分野のアーティストたちの作品をショーケースとして世界に発信したり、若い作家たちの研修、制作の場を世界中に広げたりするのを支援する機会が着実に増えてきているのは嬉しいことである。