第14回 アニメーション部門 講評
耳で感じるアニメーションの大切さ
商業作品は言うにおよばず、自主制作における表現は、デジタル技術の恩恵で飛躍的に拡大した。創作意欲と結果の間に横たわる技術的な障害は消散し、芸術系大学からの応募作品には目を見張るものも多く、将来を期待せずにはいられない。忘れてはならないのは声の演技、音楽、効果音から成る音響である。デジタル技術の恩恵以上に同世代のクリエイター同士による協力、共同作業によって成し得ている点は見逃せない。激論のすえに大賞を獲得した『四畳半神話大系』での洪水のごときセリフの応酬、『フミコの告白』は主役を演じたヒナの絶叫なくしては成り立たなかったであろうし、『マイマイ新子と千年の魔法』でも主演の福田麻由子の表現力が物語世界をよりみずみずしいものにしている。絵のクオリティが平均的に底上げされた今、耳で感じるアニメーションの可能性を強く印象付けた今回の審査だった。
プロフィール
樋口 真嗣
1965年、東京都生まれ。映画監督・特技監督。平成ガメラシリーズでは特技監督を務め、日本アカデミー賞特別賞を受賞。監督作品に『ローレライ』(2005)、『日本沈没』(2006)、『のぼうの城』(2012)など。