第13回 アート部門 講評
作品の完成度や現代におけるアクチュアリティに加え、「複数のメディアをかつてないかたちで創造的に連結しているか」「既存の価値観でとらえられない、未知で未分化である作品をどのように評価するか」をことさら意識した。後者はアーティスト自身が無自覚であっても、そこから人々に新たな意識や解釈、関係を生じさせうる可能性を読み取れるかどうかを審査する側が自問することになる。インタラクティブ、インスタレーションでは身体が介在するもの、アナログの非線形的現象や仮想現実を扱うもの、環境や生命科学にユーモラスな批評性で挑むものなどいくつかの傾向が見られた。いずれも予定調和から距離をとり、むしろ現象が生起し展開するプロセスを重視するものといえる。そのなかで、ひとつの現象の提示に終わるのではなく、バーチャルなシステムとの連結や複数のシステムを連結・共有するなど、異質なものとの出会いや新たな位相に作品を開いていくものに注目した。
プロフィール
四方 幸子
メディアアート・キュレーター
京都府生まれ。メディア芸術コンソーシアム構築事業企画ディレクター。東京造形大学特任教授、多摩美術大学客員教授、IAMAS 非常勤講師。情報環境とアートの創造的関係を横断的に研究、展覧会やプロジェクトをキヤノン・アートラボ(1990-01)、 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC](04-10)などで実現。主な企画に「アモーダル・サスペ ンション」「polarm」(YCAM)、「MobLab」(実行委員会)、「オープン・ネイチャー」「ミッションG:地球を知覚せよ!」(ICC)など。 PrixArsElectronicaほか審査員を務める。