13回 アート部門 講評

映像とメディアアートは相性がよくないのではないか。映像は他の何よりも不自由なメディアだ。決められた時間で一方向に鑑賞しなければならないし、入力に反応するような気の利いた仕掛けもできない。展示方法もスクリーンやモニターなどのありふれた規格にあわせるしかなく、それらは単に微発光する平面でしかない。などと考えていたのだが、予想に反して国内外から多数の作品が応募されており、選考も楽しめた。これは制作過程において、前述した不自由さに自覚的にならざるをえないことそれ自体が、問題意識として作品に強度を与えるためだろう。テクノロジーの進化による双方向性や身体拡張性などの全能感を無条件で賛美する作品よりも、メディアの不自由さや限界について取り組む感性の方に、より共感できるものがあった。受賞作である『SEKILALA』は、映像の中で最も制度的な、映画手法の解体と再構築に取り組んだ、意欲的な作品であった。

プロフィール
辻川 幸一郎
1972年、福岡県生まれ。映像ディレクター。