13回 エンターテインメント部門 講評

文化庁メディア芸術祭は、名前は固いですが、その応募作品は、実にユニークで楽しいものばかりのオンパレードです。審査会で多くの作品に触れていると、いま世界のアートシーンがどんな流れにあるのか、それが手に取るようにわかり、その意味で審査委員はとても恵まれた機会に触れることができます。今回の受賞作には、昨年に引き続きゲーム作品の受賞が少なかったわけですが、これもゲームというメディア芸術がひとつの壁にぶつかっている現象のあらわれだと私たち審査委員は感じていて、次なるブレイクスルーを待っている時期ではないかと思っています。その台頭として、Web作品や映像作品の分野の発展には目を見張るものがありました。受賞作品をみていただければわかるとおり、デジタルがより人間的なものとして生活の中に優しく根を下ろし始めた実感を与えた今年のメディア芸術祭であったように思うのです。

プロフィール
斎藤 由多加
ゲームデザイナー
1962年東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。93年、シミュレーションゲーム『ザ・タワー』を発表。98年、株式会社ビバリウム設立、代表取締役社長。99年、同居型育成シミュレーションゲーム『シーマン~禁断のペット~』を発表、第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアートインタラクティブ部門優秀賞など受賞多数。2005年人海戦術シミュレーションゲーム『大玉』を発表。現在は、同社で人工知能と自然言語発話の分野で研究開発を進めている。10年より「モバツイ」のクリエイティブディレクター。