13回 マンガ部門 講評

今回から審査に参加させていただきましたが、ちょうど政府のポピュラーカルチャー政策の転換点ともいうべき時期にあたって、また大学マンガ学科教員という立場に、私自身が最近転じたこともあっていろいろと考えさせられました。ご存知のとおり、今マンガ文化を支えているのは、信じられないほどのアマチュア作家の数ではないでしょうか。また読み手の日常的なメディアへの指向が、紙媒体からデジタルへ大きくスライドしています。要するに、この賞にも5年後、10年後にはノンプロ作品やノンブックのマンガが横行するようになっていくことが予想できます。それを考えると、今回のWeb部門や自主制作部門への応募数の少なさに対して、非常に危機感を感じてしまうのは私だけでしょうか。世間にマンガ学校やマンガ学科が増えているのに、それらに対してまだまだこの賞自体のアピールが行き届いていない気がします。

プロフィール
細萱 敦
東京工芸大学准教授
1963年、東京生まれ。早稲田大学文学部卒業、同大学漫画研究会出身。東京工芸大学芸術学部マンガ学科准教授。 日本マンガ学会理事。 マンガ研究家。川崎市市民ミュージアム学芸員として数多くのマンガ展を企画。主な編著書に『日本マンガを知るためのブックガイド』(アジアMANGAサミット実行委員会事務局)、『アジアMANGAサミット』(子どもの未来社)などがある。手塚治虫文化賞、読売国際漫画大賞の選考委員を歴任。海外マンガ事情に広く精通している。