12回 アート部門 講評

12回を迎えた文化庁メディア芸術祭のアート部門は1,000作品を超える応募作品が集まり、実にエポックメイキングな年となった。この応募数は文化庁メディア芸術祭の全体の応募数の約半数を占めている。また海外からの応募数が400作品近くもあるというのも特徴的だ。この事実はアート部門が国内だけに留まらず、海外からも注目されているという証しであろう。今回、審査において気になった点は国内からの応募と海外からの応募との、作品コンセプトにおけるベクトルの差異である。そもそも芸術作品とは、その作家のパーソナルな問題意識が起点となって紡ぎだされていくものであるが、そのベクトルが内(個)へ向かうのと、外(社会)へ向かうのとでは、最終的にはその作品の在り方が変わってくる。海外からの応募は圧倒的に社会との関係を問うものが多かった。一概にどちらのベクトルが正しいとは言えないが、海外からの応募のなかに、世界的に著名な公募展において受賞した作品が多数含まれていることを考えると、この文化庁メディア芸術祭の審査基準というものが、世界に問われているという思いが強くなる。

プロフィール
原田 大三郎
多摩美術大学教授
1983年、筑波大学大学院芸術学部総合造形コース卒業。坂本龍一、安室奈美恵、小室哲哉、globe、LUNA SEAなどの国内外コンサートツアーやプロモーションビデオの映像演出、また映画のオープニング映像やVFXなどを担当。1993年、NHKスペシャル『驚異の小宇宙・人体2 脳と心』CG監督。1994年、第1回日本芸術文化振興賞受賞、マルチメディアグランプリ '94 MMA会長賞受賞。2001年5月より SHARP『AQUOS』VP制作。現在、多摩美術大学情報デザイン学科教授。