第7回 マンガ部門 講評
今年度の最終選考に残った作品はすべて充分に読みごたえのある、すばらしい作品ぞろいだった。あらためて我が国におけるマンガ文化の定着を確信した。というのも、ジャンルが多岐にわたり、実に多様なテーマと表現形式がそろっている。マンガを語る時のわたしの口グセ「瞬間芸から哲学まで」を、まさに目のあたりにして、これまでの我が国のマンガの歴史を思い、胸があつくなった。しかし同時に、このような多様な作品群を前にして、何を基準に選ぶべきか悩みは深まった。おそらく他の選考委員の方々も同じ思いだったと察する。最終選考会の場では、全員の口から「どれもみな面白かった」という言葉が出たように記憶している。結局「どれだけ感情移入できるか」「どの作品が一番納得できるか」「面白いと感ずる度合はどの作品が一番強かったか」で決めるしかなかった。
大賞となった『カジムヌガタイ風が語る沖縄戦』は、テーマの重さと暗さにもかかわらず、ドラマとして充実した面白さがあった。絵の表現もテーマとあっている。優秀作『ヘルタースケルター』は、ヒロインたちのぎりぎりの感情が伝わってくる。作者の健康回復を願う。『てんじんさん』は、秀作ぞろいの医者ものの中で、医学表現に偏らず、ドラマとして見ごたえがある、重量感のある作品だ。『蟲師』は時間と空間の奥の深さを味わえる音楽が聞こえてきそうな世界だ。『バカ姉弟』は、作者の表現の幅の広さにおどろく。一見今時はやりのキャラクターものに見えて実は普遍性があると見た。
「純喫茶のこりび」は、新しい時事ものの世界を築いてくれる予感がする。
賞に一歩届かなかった『医龍』『G戦場ヘヴンズドア』『ちゃぶだいケンタ』『エンカウンター -遭遇-』そして応募作の『つめきり物語』どれもみな捨てがたかった。お目にとまった方はぜひご一読をおすすめする。