第15回 エンターテインメント部門 講評
「ライブ」と「共感」の新たな体験
この部門の応募作品で特に面白かったジャンルがWeb、アプリ、そして映像作品で、果敢に新しい体験の創造に挑戦している傾向が見られた。その中で通底するテーマが「ライブ」であり「共感」である。例えばソーシャルネットワーク上で盛り上がりを見せたのはUSTREAMのライブ中継であり、その感動をTwitterやFacebookで共有し語り合うという共通体験の言葉がネットを飛び交い、コミュニティの深化と広がりを加速させている。
物理的に同じ会場では共有体験できない人々を結びつけて共感させ、宇宙にまで連れていった『SPACE BALLOON PROJECT』が今年のエポックだったといえよう。また、Facebookの個人情報を用いて、いち早く共有体験させ、個々のネットワークのかけがえのなさや、個人情報の尊厳に気付かせた『The Museum of Me』も見事だった。iPadアプリ仕様作品の特徴としては、様々なアイディアが剥き出しになっていて、開発者たちが逞しく貪欲にリリースを続けているのが頼もしい。ゲームタイトルは業界の趨勢として長大なビッグタイトルが目立ち、実験的なゲームタイトルは応募すらされなかったのではと危惧している。日常においてはもちろん、一人ひとりが分断された生活を送っているのだが、たまには好きなコミュニティにソケットを刺すように参加したり、「ライブ」と「共感」のエンターテインメントを楽しむという動きが出てきたことに今後の期待が持てた。次は「リアル」な体験を実際に生み出すものが出てくるのだろう。
プロフィール
寺井 弘典
株式会社ピクス プロデューサー。国内外での受賞作品多数。