第22回 エンターテインメント部門 講評
時代を反映したショーケースとして
テクノロジーをテクノロジーとして楽しむ季節はとうに過ぎて、物語や生活にナチュラルに溶け込んだ作品が際立っていると感じた。技術のつなぎ目、結び目が見えないからこその没入感。それをうまく日常と地続きに接続する手腕とアイデアが問われている。奇しくも平成が終わるタイミング、より表現の自由化が進んでいるようにも感じた。『TikTok』のようなアプリでは、映像作品はコミュニケーションの手段という位置付けになる。そのメッセージは刹那的で、かつての映像作品に見られるような長尺の社会性は内在していない。この分岐点を文化庁メディア芸術祭の審査会として無視することができなかった。『チコちゃんに叱られる!』のようなテレビ番組が大賞に選ばれたのも印象的。前述の通り、技術のつなぎ目が見えないからこそのキャラクターの振る舞いがチャーミングで、現代的なアプローチだと感じた。メディア芸術祭の常連でもあるPerfumeと制作チームの作品は別格で、これが最初の応募であれば十分に大賞候補であったと思う。国内外の注目を浴び続けながらも、自らの作品群をストイックに更新しようとするその姿勢に、頭が下がる。アートに偏ることなく、エンターテインメントとしてちゃんと機能している。『LINNÉLENS』と『歌舞伎町探偵セブン』、空間演出の分野でデジタルとアナログの両端が同年に優秀賞に選ばれたのも、単なる偶然えはない。ソフト面での創意工夫の必然があった。推薦作品は、新しい視点と質感に目を向けた。それぞれに魅力的で、続きが見たいユニークなものばかり。このコメントを読んでいるあなたにとって、メディア芸術祭がひとつの登竜門として、あるいはショーケースとして機能し続けることを、半分は当事者として願っている。