第15回 アニメーション部門 講評
年々進化を遂げる表現技法
15回にも及ぶ文化庁メディア芸術祭の審査委員を初めて引き受けさせてもらった。現在制作されているアニメーション作品と幅広く触れ合うという機会もない中、こうした機会は魅力的であった。何より、活躍中の多くのアニメーション作家たちの仕事から、創作へ向けての活力をもらえるのではないかという期待もあった。
私が関わっている劇場映画及びTVシリーズなどのエンターテインメントとしてのアニメーション業界はこの数年、様々な事情から制作状況が悪化しているという実感がある。にもかかわらず、寄せられた作品の数の多さに驚いた。そして各々の作家たちが与えられた条件を乗り越えて制作の工夫や内容に挑んでいる現実にも感動した。短編作品では日本の作家だけでなく、フランスや韓国、その他海外からの応募もあった。アニメーションの表現技法は年々進化を続けている。CG技術もアニメーションという映像表現の中にそれなりに定着したという感もある。
アニメーション文化の行く末に、このメディア芸術祭のような文化庁の試みがイベントを超えて、どのような作家及び業界への支援に繋がってゆくのかということが、今後の課題のように思えた。
プロフィール
杉井 ギサブロー
1940年、静岡県生まれ。18歳でアニメーションの世界に飛び込み、東映動画において日本初の長編アニメーション映画『白蛇伝』にアニメーターとして携わる。その後、虫プロで『鉄腕アトム』『悟空の大冒険』『どろろ』などのテレビシリーズを監督。『マンガ日本昔ばなし』シリーズを立ち上げたと同時に日本各地を放浪し、10年余りのブランクを経て、『ナイン』『タッチ』といったあだち充作品で復帰。85年の『銀河鉄道の夜』、2012年の『グスコーブドリの伝記』で絶対的な評価を得る。