第17回 アニメーション部門 講評
日本のエンターテインメント作品の挑戦に拍手
私は劇場アニメーションとテレビアニメーション分野の審査を主に担当した。これらの分野への応募総数は76編で、そのうち59作品が国内からの応募だった。大賞は海外作品が受賞したが、日本のアニメーションの作品世界は、CG技術の向上もあって、表現力がますます高くなっているという印象を抱いた。しかし一方で、劇場、テレビアニメーションの応募作品は、既になじみのある監督による作品が多かった。それらは完成度は高いが、新鮮な作品に出会えたという感じがしなかったことは少々残念だった。それに比べて短編作品は、海外の作家からの応募も多く、アニメーションの技法や内容が幅広く、とても興味深く観せてもらった。劇場やテレビで公開されるエンターテインメント作品は、時代の要請という要素もあり、短編作品のような自由な創作が難しい条件の下で製作されている。そうした中で、優秀賞として選ばせてもらった作品の監督及びスタッフの挑戦的な姿勢に拍手を贈りたい。CG技術の向上とともに、作品の完成度を高める方向性が同じようになってしまう危惧はあるが、それを超える物語の面白さで日本のエンターテインメント・アニメーションの更なる牽引を期待したい。
プロフィール
杉井 ギサブロー
1940年、静岡県生まれ。18歳でアニメーションの世界に飛び込み、東映動画において日本初の長編アニメーション映画『白蛇伝』にアニメーターとして携わる。その後、虫プロで『鉄腕アトム』『悟空の大冒険』『どろろ』などのテレビシリーズを監督。『マンガ日本昔ばなし』シリーズを立ち上げたと同時に日本各地を放浪し、10年余りのブランクを経て、『ナイン』『タッチ』といったあだち充作品で復帰。85年の『銀河鉄道の夜』、2012年の『グスコーブドリの伝記』で絶対的な評価を得る。