第22回 マンガ部門 講評
審査委員2年目を終えて
審査委員も2年目となったがやはり慣れない。怒涛のような審査のあとは、読み取れなかったこと、言い残したことがあるのでは、としばらく心の嵐が収まることはない。画力、ストーリー、キャラクター、テーマにすぐれた、楽しく笑える、ドラマのある、謎めいている、ウェルメイド、フィクション、ノンフィクション、長い連載作、きらりと光る短編集、同人誌、あらゆるジャンルのマンガが飛び交い、つかみそこねたが最後一瞬で遠ざかっていく。辛い。それでも最終的にはそれぞれに個性的で、それぞれのフィールドで飛び抜けた何かを持つものが残ったように思う。2年目の感想としては、1年目の審査で「このマンガは終わり方が大事だろう」と見送られた作品が素晴らしい完結を迎えても次の年には応募がないのが残念だった。公募の賞は一期一会だと実感する。私も長く応募し続けているし何度も失望するのはいやなものだが、審査委員としては機会を戴ければと思わずにはいられない。最後に推薦作品のなかで印象に残った作品をあげておく。今回、私が最も心揺さぶられた作品のひとつはビルギット・ヴァイエ作『マッドジャーマンズ−ドイツ移民物語』だった。1980年代にアフリカのモザンビークから東ドイツにやって来た労働者たちの実体験をもとに描かれている。エリート教育だと言われて来てみたらきつい単純労働、中間搾取......今でも決して他人事とも昔話ともいえない。3人のモザンビーク人が翻弄され傷つけられながらもそれぞれ生きていこうとするその生き方が、時にユーモラスに時に激しい慟哭のタッチで描かれる。このすぐれたグラフィックノベルを多くの人に読んでもらいたい。森田るい作『我らコンタクティ』は絵にもストーリーにも勢いのある町工場SF。構図も巧みで引き込まれる。最も次回作が楽しみな作家の一人だ。