第23回 エンターテインメント部門 講評
今この時代に与える意味と価値
私は初めて審査委員として参加しました。日頃は社会的影響力のある商業デザイン、コマーシャルなどを制作している立場から丁寧に拝見、体験させていただきました。それぞれの作品はジャンルもメッセージもマテリアルもまるで違うものだけれども、人を動かす力があるかを基準にしていました。審査委員は全員違うジャンルの猛獣のような方々で、意見もバラバラ、好みもバラバラ。とても白熱した躍動感ある審査会でした。そして、そんな私たちが唯一共通していたのは「新しさとは何なのだろうか。今この時代に与える意味と価値」を深く考えたことです。一見新しい手法に見えても、目的意識がどこか凡庸であったり、真逆でとてもアナログで懐かしい要素なのに視点が新しいものであったり。結果的に、我々の心が動いたものは、人の気持ちを置いてきぼりにしていない色気と魅力にあふれるものだったと思います。 私個人としては、メディアにおいて魅力的なものは、人の頰を赤く染めるような体温のあるもの、誰も言えてなかった言葉を代弁してくれる強いメッセージを持ったもの、新しい視点を教えてくれたことにより、この世の知らなかった魅力を再発見できるもの、我々の行く先は、もっと美しいものだと照らしてくれるものであって欲しい。とはいえ、その魅力を十分に発揮しているクオリティの高さも必要です。まさに「親しき仲にも、レベルあり」な世界だと思うのです。今回受賞された作品全すべて、今年受賞する意味のある宿命を持ったものだと思います。これらの作品がまた、新たな作品に出会わせてくれる力を発揮することを願っています。
プロフィール
森本 千絵
日本
コミュニケーションディレクター、アートディレクター。武蔵野美術大学客員教授。1999年武蔵野美術大学卒業後、博報堂入社。2006年史上最年少でADC会員となる。07年「出逢いを発明する。夢をカタチにし、人をつなげていく。」をモットーに株式会社goen°を設立。 NHK大河ドラマ『江』、 朝の連続テレビ小説『てっぱん』のタイトルワーク、『半分、青い。』のポスターデザインをはじめ、Canon、KIRIの企業広告や松任谷由実、Mr.Childrenのアートワーク、映画や舞台の美術、動物園や保育園の空間ディレクションなど活動は多岐に渡る。二子玉川ライズクリスマス2018「Merry Tick Tock」プロデュース、キネコ国際映画祭アーティスティック・ディレクター兼、審査委員長を務める。