第10回 マンガ部門 講評
【作品カテゴリ別講評】コマ・自主制作・オンラインマンガ・その他
毎年順調に伸びてきた応募作品数であるが、今年はコママンガが横ばい、オンラインマンガ・自主制作マンガはほぼ半減するという残念な結果であった。とくに海外からの応募が、今年はわずか2作品と激減している。
たしかにそのままでは言葉がわからない作品をどう評価するかという問題は残るだろうが、来年はさまざまな手段で広く海外からも出品を呼びかけ、応募数をできる限り増やしていきたいものである。内容的には、自主制作も含めオンラインマンガは、デジタルならではの手法で「ほほう」と思わせるものが目を引いた。しかしいずれも「手法」の提示にとどまり、もうひとつ内容のおもしろさが伴っていないのが残念である。だが一方で地味ながら好感がもてる作品もあり、「オンラインだからカラーで続けられる」という側面もあるのだな、と気づかされた。一方、これも自主制作を含めコママンガでも、CGや動画をうまく使った作品が目立ってきている印象を受けた。新しい才能に期待したい。
プロフィール
藤本 由香里
明治大学准教授
1959年熊本県生まれ。東京大学教養学科卒。明治大学国際日本学部准教授。評論家。筑摩書房の編集者を経て、2008年4月より現職。専攻はマンガ文化論。コミック・女性・セクシュアリティなどを中心に評論活動を展開している。講談社漫画賞、手塚治虫文化賞の選考委員でもある。日本マンガ学会理事。著書に『私の居場所はどこにあるの?―少女マンガが映す心のかたち』『快楽電流』『少女まんが魂』『愛情評論』など。