12回 マンガ部門 講評

【作品カテゴリ別講評】コマ・自主制作・Webマンガ

昨年度は、文化庁メディア芸術祭への入賞をきっかけに商業出版された作品がふたつ出た。奨励賞を受賞した白井弓子『天顕祭』(自主制作作品)および、2年続けて推薦作品となった今日マチ子『センネン画報』(Webマンガ)である。ふたつとも、市場でも非常に好評をもって迎えられ、それが呼び水となったのか、今年度のマンガ部門の応募総数はなんと前年比37%以上の伸びを記録した。
しかし、残念ながら今年は、応募数のわりに突出した作品や斬新な作品が少なかったように思う。そのなかで、一コママンガの『Cartoon 2008』は、どれをとっても達者な、安定した力が評価された。
また、Webマンガの先進国である韓国の作家が描いた『ヤクゼン! 韓国美少女の挑戦』は作品として抜群のおもしろさ。ほかに、版画で描かれたマンガ作品『NEKO NO HANGA』の風合いや、『かきなぐり漫画』のギャグセンスを評価する声もあった。Webマンガは、Webならではの手法と、内容のおもしろさをどう相乗させていけるかが鍵だろうか。

プロフィール
藤本 由香里
明治大学准教授
1959年熊本県生まれ。東京大学教養学科卒。明治大学国際日本学部准教授。評論家。筑摩書房の編集者を経て、2008年4月より現職。専攻はマンガ文化論。コミック・女性・セクシュアリティなどを中心に評論活動を展開している。講談社漫画賞、手塚治虫文化賞の選考委員でもある。日本マンガ学会理事。著書に『私の居場所はどこにあるの?―少女マンガが映す心のかたち』『快楽電流』『少女まんが魂』『愛情評論』など。