12回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】インスタレーション・その他

今回のインスタレーションは全体に力作が多かった。映像にかかわるものが主ではあったが、『Oups!』 などの楽しい参加型のインタラクティブな展示から、ミュンヘンのBMW美術館のためのキネティックなインスタレーション―銀のボールが精妙なコントロールで上下し、三次元のイリュージョンをつくりあげていく作品など、テクノロジーの粋を尽くした洗練された展示作品も含まれていた。またパフォーマンス作品として『サーチエンジン』はネオダダやジョン・ケージ的な前衛スタイルを継承しながら、ランダムに出力される楽譜を次々に弾きこなしていくピアニストのパフォーマンス性と情報にまつわる現代的なアイロニーがうまく融合していた。今回はローテクからハイテクにいたるまで、人間的で、見るものの情動に訴えるものが多かった気がする。また海外からの応募者の秀作が多かったのもこの部門の特徴であろう。

プロフィール
長谷川 祐子
キュレーター
京都大学法学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。金沢21世紀美術館学芸課長、芸術監督を経て、2006年4月より東京都現代美術館事業企画課長、多摩美術大学芸術学科特任教授。国際美術館会議理事。内外で多くのビエンナーレ、展覧会を企画する。最近の展覧会:「ネオ・トロピカリア」「スペース・フォー・ユア・フューチャー」(東京都現代美術館)、「マルレーネ・デュマス-ブロークン・ホワイト」(東京都現代美術館)、 「ニュー・センソリアム」(MITリスト・ヴィジュアル・アーツ・センター)、「メディア・シティ・ソウル」(ソウル市美術館)。