11回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】インスタレーション

今回は、シングル・スクリーンのプロジェクションを前提としたビデオ・インスタレーションが多かった。これは映像の部門と競合するところだが、あえて大きなスクリーンでの展示を要素とするということだろう。 『Hallway sculpture』のような階段を使ったサイトスペシフィックな作品から、一定の大きさの空間で、アミューズメントパーク的な楽しさを演出しようとする『Arctic Sanctuary』など、空間との関係に多様性がみられた。また、社会性をもった秀作として、移民の軌跡とアイデンティティを視覚化しようとした『seeker』、観光地のプリクラ撮影の設定のなかで参加者のヴィデオポートレイトを撮った『sight seeing spot』などがあった。『Camera Lucida』のように実験的な技法で、従来なかったイリュージョンを見せるものも健在だが、今後はより社会や歴史にも関わった作品が期待される。

プロフィール
長谷川 祐子
キュレーター
京都大学法学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。金沢21世紀美術館学芸課長、芸術監督を経て、2006年4月より東京都現代美術館事業企画課長、多摩美術大学芸術学科特任教授。国際美術館会議理事。内外で多くのビエンナーレ、展覧会を企画する。最近の展覧会:「ネオ・トロピカリア」「スペース・フォー・ユア・フューチャー」(東京都現代美術館)、「マルレーネ・デュマス-ブロークン・ホワイト」(東京都現代美術館)、 「ニュー・センソリアム」(MITリスト・ヴィジュアル・アーツ・センター)、「メディア・シティ・ソウル」(ソウル市美術館)。