第11回 アート部門 講評
【作品カテゴリ別講評】インタラクティブ・その他
インタラクションは、メディアアートのひとつの本質であるが、単にコンピュータで制御された機械と双方向に情報をやりとりするだけでは作品にならない。「触ること」あるいは「参加すること」によって、そこに何が新しく生まれるかが重要なのだ。たとえば『複眼体験』では、小さな穴が多数あいた球体をかぶるだけで新たな不思議な体験が生みだされる。『Se Mi Sei Vicino』は、人と人が近づくと何が起こるか、その反応をみごとに可視化している。蛇口をゆるめるとため息が漏れる『ためいきまじり』は、単純ながら思わず笑ってしまうインタラクションである。技術力に加えて表現力、これからのインタラクティブアートには、ますますこれが要求されよう。
プロフィール
原島 博
東京大学大学院教授
1945年、東京都生まれ。もともとは数学的な情報理論や通信方式論の研究者であったが、1985年頃からより本質的な人と人の間のコミュニケーションの仕組みに興味をもち、ヒューマンコミュニケーション工学を提唱。顔学などの新しい学術領域の創出や、科学技術と芸術の境界にも強い関心をもつ。映像情報メディア学会会長、日本バーチャルリアリティ学会会長、日本アニメーション学会副会長などを歴任し、現在は日本顔学会会長でもある。