第11回 アニメーション部門 講評
【作品カテゴリ別講評】劇場アニメーション・テレビアニメーション・OVA
すべての放映作品がエントリーされているわけではないが、改めてテレビシリーズの本数に驚いた。企画は大別して「人気漫画を原作とした作品」と、昨今の時流なのだろう、いわゆる「秋葉原的メディアを原作とした作品」が多くを占めていたように感じた。別段「現場主導のオリジナル作品が少ない」と嘆いているわけではない。作品の良し悪しと、原作がある、無い、は別だ。しかし、入選の2作品『電脳コイル』『グレンラガン』は奇しくもオリジナルとなった。どちらも、製作者たちの「こういう作品をつくりたかった、観たかった」という熱意に満ちており、「長年温めていた企画」だろうと推測できた。そういった作品の選評に立ちあえたことはうれしかった。ただ、ひとつ気になったことがある。「秋葉原的メディア」は、若い現場スタッフにとっては、勝手知ったる我が家のはずだ。にも関わらず、それらの作品群から"異種融合的な新しい何か"が発信されているようには感じられなかった。それを"やっぱりね"と切り捨てるのは、もったいない気がする。あるいは選評するこちらの感性が鈍いのか古いのか。その部分に関しては次回以降のエントリー作品に注目したい。
プロフィール
幾原 邦彦
アニメーション監督
1964年生まれ。1985年京都芸術短期大学卒業。86年東映動画に入社。92年TVアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズに演出として参加。93年映画『美少女戦士セーラームーンR』監督。96年東映動画を退社。97年TVアニメ『少女革命ウテナ』企画・原作・監督。99年映画『少女革命ウテナ・アドゥレセンス黙示録』監督。2007年TVアニメ『のだめカンタービレ』のOPアニメーション。09年TVアニメ『青い花』のOPアニメーション。ほかに、小説、マンガ原作など。