7回 アニメーション部門 講評

【作品カテゴリ別講評】短編アニメーション

選考の基準としては、短編として独立した説得力をもっているか、アニメーション独自の表現が見られるか、興味深い内容を持っているか、などとした。今回の応募作、数は増えたが水準に達している作品が少なく、気持ちよく選べなかったのが残念だった。それでも幾つか印象に残る作品に出会えたのは多数の応募作を見ていく中の救いだった。
受賞作以外で例を挙げると『スモールランドジャズ』は、伝統的な実験映画で、所々ハッとさせられるアイデアがあったが、コンセプトの統一と音楽の構成をもっと突詰めてほしかった。『ファンタスティック セル』は、クラシックなアニメーション・テーマではあるが、アニメーションの偏執狂的力を出した作品で興味深い。
ただオスカー・フィッシンガーやマクラレンほど音楽と映像の一体感に成功していないのと、音楽のアレンジに工夫がないのが残念な点だ。『レッドキャタピラー』はクオリティーとしては疑問が残る作品だが、全体的に病理的な応募作が多かった中、意識的か無意識的かは判断つかないが、現代社会の不安感を色濃く表出している作品として最終選考に残した。
優秀賞の「こまねこ」は、人形アニメーションの技術としての高さとバランスが評価された。ただ語っている中身の貧弱さは、今多くの短編アニメーションに共通している問題である。

プロフィール
山村 浩二
アニメーション作家/東京藝術大学大学院教授
1964年生まれ。東京造形大学卒業。アニメーター、絵本画家。東京藝術大学教授。