10回 アニメーション部門 講評

【作品カテゴリ別講評】短編アニメーション

今年も多くの短編アニメーションと出会うことができた。昨年より応募数が増え、気合いを入れて1次選考に臨んだが、作品数のわりにはすんなりと選抜することができた。正直なところ、短編ジャンルは作品が拮抗せず、むしろ劇場長編やTV・OVA作品に先鋭的な作品が多く見受けられた。しかし最終審査を経て決定した大賞以外の受賞作品は、短編だらけになるという意外な結果になった!短編アニメーションは、その発想力・アイデア・美意識・技法・表現どれひとつとっても強烈な個性に彩られ、未知なる愉しみに溢れている。だからすばらしいのだ! だが、今年の短編に関して言えば、数本を除いて、作者の狂おしいほどの情熱とこだわりを感じる作品が、昨年に比べてそれほど多くはなかった。私たちが、長編やTV・OVAや短編の異なる作りの表現を、同じ土俵で選ぶという無謀な審査に挑み、数百本の作品と格闘し、そのうえさらに長い時間をかけて議論を尽くしているのも、ただただ、アニメーションの優れた才能を秘めた新しい表現者を発見する喜びだけのためなのだ! これに尽きるのだ! 受賞者の皆さま、本当におめでとうございます! 推薦作品の皆さまも更なるご活躍をお祈りいたします。また、作品を送ってくださった多くの皆さまに、心より感謝を申し上げます!
そして、すべての皆さまのNextOne! 次回作を期待しております。

プロフィール
片山 雅博
多摩美術大学教授、アニメーション作家
1955年、東京都都生まれ。少年時代に手塚治虫の漫画とアニメーションに心を奪われ、和田誠と久里洋二のアニメーションで作品創りに目覚め、アニドウ上映会で世界の傑作アニメーションに衝撃を受け、アニメーション協会のワークショップで鈴木伸一に師事。「グループえびせん」で自主作品を発表。現在、多摩美術大学グラフィックデザイン学科で後進の育成にあたる。日本アニメーション協会理事・事務局長。日本アニメーション学会理事。映像作品に『フィルムは生きている・手塚治虫フィルモグラフィ』『K・A』『K・A2』『冬の日』などがある。