第11回 アート部門 講評
【作品カテゴリ別講評】静止画
静止画からは、賞候補が出なかった。このことが今年の静止画部門全体のレベルを表している。そんななか、西村宜起の『空間観察』、SEO June SeokとPARK Jin Wanの『Visual Genealogy』、そしてFrode & Marcusの『lait, une couleur』、川島高の『ロサンゼルスのある一日の光景』は可能性を感じる作品として評価された。静止画部門において思うことは、今までにない新しい表現をしようとしても、ありとあらゆる手法が世の中にすでにあるので難しいように思う。新しい表現を探るという20世紀的アプローチよりも、むしろ今までにない文脈を見つけるという向かい方が、これからは正しいのではないかと思う。動画や合成やCGなどで何でもできる時代、動かない一枚の静止画の強さを見せつけるいい時期にきているのかもしれない。この静止画部門の今後に期待したいと思う。
プロフィール
佐藤 卓
グラフィックデザイナー。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などの商品デザインを手がけるほか、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」等のVIデザイン、NHK教育テレビ『にほんごであそぼ』の企画・アートディレクション、東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHTではディレクターを務めるなど、活動は多岐にわたる。