第10回 アート部門 講評
【作品カテゴリ別講評】静止画
一点の静止画で時代は変わると思い続けている。ショックを与えてほしいのだ。頭をガーンと叩いてほしいのだ。芸術とはそういうモノだ。大きな空間での個展やインスタレーションのなかで中心に位置する静止画や、エディトリアルデザインのなかで繰り返し、繰り返し訴えかけてくるヴィジョンとは違って、雑然と並べられた公募展会場から、この一点を選び出すのは難しい作業だ。長谷川祐子さんの鋭いひと言に支えられて11点の推薦作品を選び出した。中江昌彰さんの『ROCKET』、夕焼け空のなかを高速で鉄道で運ばれていくROCKET、鹿のいる公園のなかに設置されたROCKET。異空間との対比がおもしろかった。過去受賞作である橋本典久さんの『lifesize』や加納佳之さんの『機関紙』、太湯雅晴さんの『太湯銀行券』のような、日常のなかでの密度ある作品に出会えなかったのがすこし寂しい。やはり林俊作君の大作『Sagrada Familia計画』に注目が集まった。
プロフィール
浅葉 克己
アートディレクター
1940年生まれ。株式会社ライトパブリシティを経て、1975年株式会社浅葉克己デザイン室を設立。サントリー、西武百貨店、ミサワホームなど、数々の広告を手がける。日宣美特選、日本宣伝賞、紫綬褒章、東京ADC賞グランプリなど受賞多数。東京ADC委員、東京TDC会長、JAGDA理事。中国に伝わる、生きている象形文字「トンパ文字」に造詣が深い。卓球六段。AGI(国際グラフィック連盟)日本デザイン総会実行委員長。