第10回 マンガ部門 講評
【作品カテゴリ別講評】ストーリーマンガ
今回は、第10回ということもあり、前年を上回る大変レベルの高い応募作品が多数そろった。最終候補としては、10年の節目の大作にふさわしく、ベテランの骨太な息をのむような作品に満場一致で決定。優秀賞にも、ファンタスティック、癒し系など、さまざまなジャンルの作品が残り、ストーリーマンガならではの表現の豊かさ、発想のおもしろさと間口の広さを感じた。審査の対象外となった作品も、ユニークで力のこもったものが多く、IS(インター・セクシャル)や性同一性障害の世界に正面から取り組んだ問題作などもあり、今後の新しいジャンルとしても期待が大きい。ストーリーマンガの特異なスタイルは、戦後開発された、日本独特の文化のひとつとされている。手塚マンガという太い幹から幾重にも枝を伸ばし、たわわにマンガ家という実をつけた、このストーリーマンガの木の広がりは、可能性という希望いっぱいに、今後も空に向かって伸び続けるに違いない。今回は、海外からの応募が少なかったのが残念であった。文化交流のためにも、その国独自のすばらしい作品で日本マンガと競っていただきたい。文化庁メディア芸術祭も回を追うごとに応募数も増え、喜ばしいことだ。来期もストーリーマンガならではの作品が多数応募されることを願っている。
プロフィール
わたなべまさこ
マンガ家
東京都生まれ。1952年、『小公子』でデビュー。集英社、小学館、講談社、双葉社、秋田書店、創美社、宙出版、ぶんか社等に連載短編を執筆。現在、双葉社「jour」に『金瓶梅』連載中。1971年、第16回小学館漫画賞『ガラスの城』。2002年日本漫画家協会賞。文部科学大臣賞。2006年旭日小綬賞。現在、創造学園大学 芸術学科教授。