第12回 マンガ部門 講評
【作品カテゴリ別講評】ストーリーマンガ ―
候補作はバラエティーあふれる傑作揃いで、大賞、優秀賞を選びだすのは至難の技だったが、ピアニストの頂点を目指す少年たちの成長とクラシック音楽のすばらしさを、詩情豊かに、ドラマティックに描いた『ピアノの森』が、長時間の議論の末、大賞に選ばれた。同じくクラシックをテーマにした『マエストロ』との激しい競り合いの結果だった。
優秀賞には、洋服業界の熾烈な競争と人物描写の見事さがすばらしい『Real Clothes』、民俗学の伝奇、伝承を、大胆な仮説と推理で解く知的なおもしろさの『宗像教授異考録』、著者独特の不可思議世界が楽しい『栞と紙魚子』、多数の登場人物を纏める構成が大きな感動を呼ぶ『マエストロ』が選ばれたが、どの作品も大賞に相応しい完成度とおもしろさで、あらためてマンガ文化の底の深さ、スケールの大きさを感じさせられる審査会となった。
プロフィール
永井 豪
マンガ家
1945年石川県生まれ。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、67年『ぼくら』誌上にて『目明しポリ吉』(講談社)でデビュー。翌年『少年ジャンプ』で『ハレンチ学園』が連載開始となり、たちまち大ブームになる。以後、現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を発表し続けている。代表作には『ハレンチ学園』『デビルマン』『マジンガーZ』『バイオレンスジャック』『キューティーハニー』など多数。05年より大阪芸術大学キャラクター造形学科教授。