第10回 アート部門 講評
【作品カテゴリ別講評】Web
インターネットのウェブがまだ珍しかった頃、洒落たホームページはすぐ話題になった。それが今では、あっという間に当たり前の日常になった。そのような時代にあって、アートとしてのウェブ作品は、いま大きな曲がり角に来ているように思える。そこで主張すべきは、単なる絵画的あるいは映像的なアート性ではない。それでは単独の絵画あるいは映像作品と差別化できない。一方で、いかにホームページのメッセージ性が高くても、表現のレベルが高くなければアート作品とはいえない。今回も多くの興味深い作品の応募があった。しかし、残念ながら今年もウェブからアート部門の受賞作品が選ばれなかった。ウェブならではのアート性に優れた、突出した作品を見いだすことができなかったからである。
来年こそは新たな時代の到来を予感させる意欲作を期待したい。
プロフィール
原島 博
東京大学大学院教授
1945年、東京都生まれ。もともとは数学的な情報理論や通信方式論の研究者であったが、1985年頃からより本質的な人と人の間のコミュニケーションの仕組みに興味をもち、ヒューマンコミュニケーション工学を提唱。顔学などの新しい学術領域の創出や、科学技術と芸術の境界にも強い関心をもつ。映像情報メディア学会会長、日本バーチャルリアリティ学会会長、日本アニメーション学会副会長などを歴任し、現在は日本顔学会会長でもある。