第18回 アニメーション部門 講評
ゆたかな疲れに身をゆだねて
審査をしながらも、そしてそれを終えた今もある考えにとらわれている。それは日本においてのテレビアニメーションの位置づけというか役割というか、もうひとつ重ねて言えば貢献というかについてである。今回私が「劇場アニメーション、テレビアニメーション、オリジナルビデオアニメーション(OVA)」の審査区分を担当したことにもよるが、出品作品の多くがその出自をテレビアニメーションのシリーズに置いているように見えた。私見だが、日本のアニメーションは1963年以前と以後ではその存在の意味合いを一変させたのではないかと思っている。改めて記すまでもないが63年というのはテレビ30分シリーズアニメーションの『鉄腕アトム』が生まれた年だ。それ以前、日本にも普通の意味でアニメーションはあった。立派な作品も多数存在している。しかしテレビシリーズの鉄腕アトムの誕生によって、日本のアニメーション事情は世界のそれと決定的に違ったのではないだろうか。カンブリア大爆発ではないが"アニメ大爆発"が起こったのだ。ジャパニメーションという言葉があり、意味合いはさまざまに解釈されるが、主には世界に類を見ない多様性だと私は思っている。過激なロボットアクションものがあるかと思えば、王道の児童文学的な作品もある。SFやファンタジーものもあれば、学園ものスポーツもの、歴史に魔法、ユルユル萌え系......となんでもござれだ。ありとあらゆるジャンルが、ユーザーを求めてしのぎを削っている。一度確立されたジャンルは、ユーザーの肥えた目に鍛えられ、繰り返し制作される中でそのクオリティを上げてきた。多分この様なことは世界には稀で、ある意味驚きである。
今回の「劇場アニメーション、テレビアニメーション、オリジナルビデオアニメーション(OVA)」の受賞作を振り返ればその思いをいよいよ強くせざるを得ない。翻って「短編」に目を向ければその作家性の豊かさと完成度にこれまた驚かされた。