第19回 エンターテインメント部門 講評
世界のすべてがエンターテインメントであれ
メディア芸術、さらにエンターテインメント部門という混沌かつ野放図なカテゴライズから、作品たちははみ出している。という思いは前回よりも強く、比べようもないものを比べて、大賞や優秀賞といった区分に苦しみながらはめこむ困惑はさらに増した。まずはそれを喜ぼう。既存の秩序の内側にあったり、明快に社会の役に立ったり、効率の良し悪しといったことから、エンターテインメントは遠く離れていてよいからだ。そうじゃない人や事象すらも、救って楽しませるものであってほしいと願うからだ。楽しませるということ以外、何の役に立たないものであっていいと思うからだ。『Dark Echo』の抽象的な組み合わせで、驚懼と虚構をつくりだし想像力の深淵を覗きこませる力、『Drawing Operations Unit: Generation 1』の人間と共生することを目論む弱さを強みにしたロボットが指し示す未来、『Solar Pink Pong』の太陽光を使ってストリートに規則を生みだすことで自然発生する戯れと愉快さ、『Prune』の抽象的な展開が折り重なっていくことで瞑想の深みに導く没入感の凄み、『Thumper』のグルーヴに同期させんとする意志力、『ほったまるびより』の生々しい肉体とそれを届けるまでのストーリー、『Black Death』のインターフェイスのシャープさ、『ズームイン顔』は、それだけで笑顔を生みだすのがすげぇな、『本のアプリStand』の人を束ねるためのシンプルなすごさ、『group_inou「EYE」』の貪欲なアイディアと実現力、『あつまれ!わくわくパーク』の「寿司くん」好きです、『2.5次元マスク』どんどん展開してほしい、『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』のつくり込み、『Plug & Play』の気持よいアニメーションに関われる喜び、ほかにもいろいろ。そして、それらすべてを巻き込む力を持ちえる魅せる力と象徴性を発揮する『正しい数の数え方』。エンターテインメントが世界のすみずみまで浸透し、あらゆるところに立ち現われる未来を想像して楽しみが膨れ上がる。