第17回 エンターテインメント部門 講評
祭りと手芸
エンターテインメント部門を、文化庁メディア芸術祭における「その他部門」と私は勝手に呼んでいる。しかし、個人から企業までのさまざまな主体によるさまざまな文脈の作品が「エンターテインメント」という言葉上で交錯しあい、新しいチャレンジで人々を楽しませようというサービス精神にあふれた作品たちが一堂に会している、という点で価値ある場所になっている。応募作品の多くが今の「世間」に近いところで実施されていることもあり、毎年比較的はっきりとした傾向が見てとれる。全体として、よりスケールの大きな「興行」的性質を帯びていく流れと、より個人的な文脈や嗜好に根差した「手工芸」的な制作に向かっていく流れ、これらの二極化がますます強まっていることを改めて感じた。前者では、より多彩な技術と、より共感性の高い物語を融合し、より多くの動員とともに、ますます洗練を見せている。映像やウェブの媒体を問わず、そこには必ず共感し熱狂する人々が取り込まれ、ひとつの興行として価値付けされた新しい「祭り」へと向かっていくような気配を感じる。一方、後者では、各個人の中でメディア表現がより内面化され、ますます豊かに多様化していく様子が見てとれた。部門の特性なのか、いわゆる「作品を問う」野心よりも「やってみました」「作ってみました」といったカジュアルな動機を感じるものが目立ち、SNS上における各人のタイムラインや、趣味や属性の似た人々によって形成されるクラスタ空間内で色濃く醸成された彼/彼ら独自の「良さ」が無邪気に表出されたような作品が、より印象的に映った。以上のような「その他部門」における二極化の進行状況を、「より」と「ますます」が異常に多い文章として書き記すことしかできないというつたなさは一審査委員として恥じ入るばかりだ。しかし私個人としては、今回の審査の価値付けの基準が、純粋な作品の出来不出来以外に強く見出せなかったこともあり、受賞作品それぞれの個性に等しくご興味を持っていただければ幸いである。