第14回 エンターテインメント部門 講評
作品制作に必要なものは、人間のセンス
今回、初めて文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の審査委員をやらせていただいた。エンターテインメント部門と一括りにしてはいるが、作品の種類が、ゲーム、遊具、映像、キャラクター、Webなど多岐に渡り、これらを同一線上で審査するのは、かなり難しいものがあり、審査会も白熱した内容になった。
そんな中にあって、Twitterを素材にした『IS Parade』が、その動きのユニークさを含め、多くの審査委員の票を集めて見事、大賞に輝いた。これも時代といえば、時代であろう。
ゲームについていえば、制作費の高騰によるものなのか、応募作品には、ある程度売り上げが見込めると思われるシリーズの続編ものが多く、それはそれでエンターテインメント性も完成度も高いものだったが、ただ、今回は続編物の作品には厳しい結果となってしまった。残念である。
コンピューター創成期と違い、デジタルなメディア、インタラクティブなメディアが当たり前になってしまった現在、そのメディアのあり方自体に、人々は驚かなくなってしまった。「すごいCG映像」や「ちょっとしたインタラクティブ性」だけではもはや人々を楽しませることはできないのである。
エンターテインメントをつくるのに必要なものは、やはり人のセンスであろう。そのことを改めて感じさせてくれた審査会であった。
プロフィール
堀井 雄二
ゲームデザイナー
1954年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。フリーライターとして活躍中にゲームデザイナーの道を歩み始める。アクションゲームが主流であった時代に、83年『ポートピア連続殺人事件』などの独特なゲームを手掛けて成功を収めた後、ロールプレイングゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズを世に送り出し、日本のテレビゲームの礎いしずえを築くとともに、ゲーム業界に多大な影響を与えている。